女性にとって、赤い口紅は今も昔も、
つけるには場所と緊張を伴うものです。
古来より赤は特別な色であり、赤い小豆が特別な作物として
珍重されたこともうなずけます。
赤といってもあずき色とはJISの慣用色によれば、
すこしくすんだ赤褐色のイメージです。
しかし、実際の小豆の色は、もっと深みのある赤、
濃いガーネットのような色に見えます。
現代では、赤色を使った実験において様々なパワーが証明されています。
赤ユニフォームには勝率をあげる効果があり、
赤色ペン等は学業成績には悪影響を与える色であり、
赤を着れば権力者を連想させて周りを威圧し敬わせる、
女性が身に着けるとセクシーに見えるとか。
赤は自己防衛や性的な、もっとも人間の本能に近い部分の脳を
刺激することが分かっています。
日本では古来より呪術の道具や魔除けのために、
小豆は神に捧げられ、食されてきました。
このような風習は中国江南省を発祥として、
朝鮮半島に伝わり、日本に入ってきたとされています。
小豆粥は季節の変わり目、月初め、月の中日など
宮中でも食されてきたことが文献にあります。
赤は 火の色、暁の色、茜の色。
小豆の赤には自然や神に対する畏敬と崇拝、
物事のはじめに食すことで生命を鼓舞する意味がありました。
小豆を食べる意味は薬効以外に、「色」にもあったのですね。
科学的根拠がなかった時代から、先人たちは赤の持つパワーを
感じ取り、小豆の赤を用いてきたのです。
そのパワーを知っている現代においては、
赤の口紅はやはり躊躇する色なのでした。
参考文献
あずき博士が教える「あずき」のチカラはこんなにすごい!
農学博士(あずき博士) 加藤淳
「赤を身につけるとなぜもてるのか?」
タルマ・ローベル
「日本人の愛した色」
吉岡幸雄