今回は京菓子のルーツと言われる、清浄歓喜団を紹介します。
この清浄歓喜団は、奈良時代、遣唐使によって仏教とともに伝えられたお菓子「団喜」の一種で、当時の姿をそのまま残しているのだそうです。この姿には千年の歴史が詰まっているということに、まず驚きます。
こしあんに七種の香料を加えて米粉と小麦粉の皮で包み、ごま油で揚げてあります。揚げ菓子というのが珍しいですね。千年の歴史とはいえ、中身にあんこが使われるようになったのは、江戸時代から。昔は干した果物などが使われていたようです。
日本に伝わった当時から、密教のお供え物として使われていたのだそうで、現代も当時と変わらず、月の1日と15日に、お店の方が精進潔斎、つまり前日から肉や魚は食べないで、全身を清めてから作っておられるのだとか。
どことなく、宗教の香りがするのはそのせいなのかと納得しながら、お盆のこの時期にはふさわしいと思ったりもします。
さて、昔はとても庶民の私の口に入るような品ではなかったであろうこのお菓子、さっそく頂いてみましょう。
包みを開けるとふわっとごま油の香りがしました。期待が高まります。
食べ方にはポイントがあります。20分も揚げてありますから、なにせ硬いんです。底の部分に何かを刺して、まず二つに割ってから食べます。が…この通り、きれいに割るのは難しかった(苦笑)
食べてみると、あんこの風味や甘さよりも、ごま油と「7種の香」の風味が楽しめます。シナモン、クローブ、白檀、龍脳などが使われているらしく、まさにお香を食べている気分です。お香には「清め」の効果があり、八つの結びは八葉の蓮華、形は金袋になぞらえている、ということで、もう非常に格調高い、厳粛な気分になりました。
お香とごま油の香り豊かなこのお菓子、好みは分かれるところだろうと思います。
確かに、はじめは驚くかもしれませんが、食べるにつれて癖になるという、他にはない力を持ったお菓子です。
この清浄歓喜団を作っているのは日本で亀屋清永だけ。
本店は祇園、八坂神社の階段そばにあります。1617年創業ということで、今年でちょうど400年。お菓子もお店も、本当に長い歴史が詰まっています。
亀屋清永(本店)
〒605-0074
京都府京都市東山区祇園町南側534番地
代表電話 075-561-2181