Warning: getimagesize(/home/mikangumi/azuki.tokyo/public_html/wp-content/uploads/2018/11/e1ab878d80c1c7036776ad95e333c148.jpg?v=1603756443): failed to open stream: No such file or directory in /home/mikangumi/azuki.tokyo/public_html/wp-content/themes/dp-magjam/functions.php on line 1062
竿物で友達まで呼ぶ和菓子屋さん。山形の佐藤屋さん。 | Azuki - Red beans webmagazine

小豆と和菓子が主役のライフスタイルマガジン

竿物で友達まで呼ぶ和菓子屋さん。山形の佐藤屋さん。

竿物で友達まで呼ぶ和菓子屋さん。山形の佐藤屋さん。

和菓子屋さんで、大きな羊羹をまるまる一本買ったのは、どのぐらい前になりますか。

大きな羊羹まるまる1本は買わないなあ、自分は、ミニ羊羹を、自転車の栄養補給に買うぐらいかなあ、と、おっしゃるでしょうか。
竿物(さおもの)の、一本まるまるおおきな羊羹は、自分用ではなく、贈り物でしか買わない、と、おっしゃるでしょうか。

羊羹だけでなく菓子全体が、小さく、そして個包装に向かっています。

そんななか、菓子がもつもともとの意義や文化を大切にしたいからと、まるまる大きな竿物サイズにこだわった和菓子をつくり、和菓子を囲んで笑顔になる文化そのものを提案する活動をされている和菓子屋さんがあられます。

山形の、「乃し梅本舗 佐藤屋」さんです。

今回は、八代目の、佐藤 慎太郎さんにお話しをうかがってきました。

お話しくださった、佐藤慎太郎さん。

これを読んだら、あなたも、今日、竿物の羊羹を買いに行きたくなるはずです。

 

佐藤屋さんは、もとから、竿物は竿物でゆくと決められていたのですか?

 

いえ、時代のながれのなかで、わたしたちも、菓子を小さく切って、個包装にして売っていた時期も最近まであったんです。

毎朝、小さく切った菓子を袋に詰める作業をしていました。

でも、これは、菓子屋の仕事なんだろうかとふと思ったのです。

菓子屋って、美味しい菓子を作ってみんなを笑顔にする仕事なのに、個包装のちいさくなった菓子をつくって、みんなをどんどん寂しくしてないかって。

たとえば、おじいちゃんが好きだった羊羹を法事でみんなで食べようと、個包装の羊羹をみんなでピリッてビニールをやぶりながら、かじるよりも、羊羹をきりわけてたべるほうが、おじいちゃんの想い出に、より話しがはずみませんか?

たとえば、昔ちいさなころ、大きな羊羹をいただいたあと、お母さんからすこーしだけ分厚くきってもらう羊羹をおやつにもらえたら、すっごく特別な嬉しさありませんでしたか?

自分ご褒美にといって、羊羹をいつもより分厚く切るときのワクワクした贅沢な気持ち、あなたにも、ありましたよね?

そんな菓子を取り分けて、そして菓子を囲んで食べ、笑顔になる文化があったのに、いま、その取り分ける手間を省いてしまったために、みんなを寂しくしているのは、菓子屋自身じゃないかとおもったんです。

個包装化が時代の流れだからといって、環境に迎合するだけどいいのか、自分のところもこのままでいいのかって考え始めたら止まらなくて、それで、よし、うちは、竿物でお客さんを笑顔にする商売に専心しようと、舵をきったのです。

 

お客様の反応はいかがでしたか?

 

こんなお客様がいらっしゃいました。

あるとき、おばあちゃんが一人でこられたのです。

お客様 「私ひとりだから、こんな大きな羊羹、一本も食べられない。」

佐藤さん「ご家族がいるでしょう。」

お客様 「いない。」

佐藤さん 「お友達はいらっしゃるでしょう。」

お客様 「みんな死んだ。」

佐藤さん 「お知り合いはいらっしゃるでしょう。ちょっと携帯電話を見せてください」。

そう言うと、お客様は携帯電話の連絡先をみせてくださったんです。
すると、連絡帳にはお名前がずらっと並んでるんですよね。

そこで、こんなご提案をしてみました。
いますぐ、電話帳の上から順番に電話かけて、「羊羹を一緒にたべてくんない」と誘ってみてくださいと。

するとお客さん、ほんとうに電話をかけてくださったんです。

「ねえ、いま菓子屋にきてるんだけど、でっかい羊羹まるまる一本も売りつけられるから、一緒に食べてくれない」って。

片っ端からお電話をかけて何件目かすぐに、羊羹を一緒に食べてくださるお友達が見つかったのでした。

こうして、お客様は羊羹を一本買って帰ってくださったのでした。

そしたら次の日、今度はすっごい笑顔で、またそのお客様がいらしてくださったのです。

「美味しかったわ」と、5本も買ってくださったのでした。

そして、またその次の日も。

それ以来、そのお客様は、ずっと毎年、羊羹を買ってくださって、お友達もたくさん連れてきてくださります。

僕が嬉しいのは、羊羹をたくさん買ってくださるより、そのお客様のお顔が、ほんとに毎年、どんどん、楽しそうに幸せそうに笑われるようになっていることなんです。

僕がいうのも変ですが、初めてお会いした数年前より、いまのお顔のほうがすっごく輝いておられます。

僕は、コミュニケーションのきっかけを竿物の羊羹が結ばせてもらったからだと、自分ではおもっています。

そのお客様は、羊羹でコミュニケーションをとりもどしていただけたのかなあと。

菓子はコミュニケーションのきっかけにしてもらえるすごいアイテムで、そんなすごいものを僕は作っているんだって、このときお客様からおしえていただきました。

 

竿物を勧めたいというより、笑顔をつくるきっかけをおとどけしたいのですね。

新しい味の世界をひらいてくれる羊羹「りぶれ」

 

はい。

個包装になってしまって、食べ方さえ忘れられてるのでは思います。
だから、和菓子は、本当はもっと自由で楽しいアイテムなんだってことを伝える活動もしています。

たとえば、切り分けて食べる文化、菓子が真ん中あるだけで笑顔になる文化をもっと広めたいという想いではじめているのが、いろんな飲み物とのペアリングです。

先日は、岡山のワイナリーさんに呼んでいただいて、羊羹とワインのペアリングイベントさせていただきまたし。

日本酒まつりにも参加させていただきました。
また、お茶どころとも。

イベントのときは、前もって、ペアリングするひとつひとつの銘柄の味の特徴を確かめ、それぞれにあった羊羹を、オリジナルでつくってもってゆきます。

たとえば、うちには、「くろもじ」という商品名の羊羹があるのですが、お店で出す「くろもじ」よりも、ペアリングのときに両方の味がひきたつように、いつもよりすこし濃い味に仕上げるとかです。

 

菓子屋から、菓子を真ん中におしゃべりして笑う文化を、ひろげようという活動ですね。

 

はい。

「お客様が切るのが面倒とおっしゃる」とか「お客様が一人では食べきれないとおっしゃる」と、わたしたちは言い訳しますが、ほんとのところ、1本の羊羹をたくさんに切り分けて売ると、手間もかかるし、包装代もかかります。

それが、結局は、割高になって、お客様のところに跳ね返っている。

小さくすれば小さくするほど、高いんですよ。

切ってみんなで食べるとこんなに楽しい、って体験を、わたしたちが業界をあげてもっと伝えてゆきたいとも考えています。

 

佐藤さん、お話しありがとうございました。

 

となりにおられた職人さんに、佐藤さんが席をはずされたとき、こそっと質問させていただきました。

店頭に立つ職人さん。

 

「竿物でゆくとお話しがお店であったとき、心のなかでどんな言葉がよぎりましたか?」

正直、大丈夫かっておもいました。
でも、1本千円を超える羊羹が、いまのほうがたくさん売れています。

 

職人さんも、販売を担当してくださる方も、自信をもって、お客様に竿物をおすすめくださるお姿が、より一層、お客様にも「竿物を買うと楽しい」が伝わるひとつの要因になっているのも感じられました。

インタビューさせていただいている脇で、竿物の商品名を言って指さしてすぐ買ってゆかれるお客様や、スマホで写真を見せてコレと買求められるお客様もたくさんおられました。

 

みんなで食べたら楽しい、おいしい、が、もっとたくさん伝染しますように。

あなたも、もし、もっと楽しいことないがないかなあと探す気持ちにっなたら、まず竿物の羊羹を買って、久しぶりのお友達に「羊羹を買わされたから、一緒に食べよう」と連絡してみませんか。

 

この手法が、流行りますように。

 

【お話しくださったのは】

乃し梅本舗 佐藤屋 (株式会社佐藤松兵衛商店)
八代目 佐藤慎太郎 様
山形県山形市十日町3-10-36
tel.023-641-2702
http://satoya-matsubei.com

※用語説明
竿物 和菓子の形状のひとつで、長い直方体、長い円筒形、長い三角形などをしたものの総称。棹物(さおもの)、棹物菓子ともいう。
(wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%B9%E8%8F%93%E5%AD%90

執筆 和田美香

ABOUT THE AUTHOR

Azuki編集部編集長和田 美香
むくみやだるさで仕事も子育ても苦しかったとき、小豆玄米ごはんや、オリジナルの小豆シリアルを毎日食べることで、調子をとりもどす経験をする。もともと美容業界で働いていており、内面から輝く美容には、毎日の食も大切と実感していたことから、小豆のよさを世界の女性に伝える大使としてAzuki.tokyoの活動を始める。
Return Top