小豆と和菓子が主役のライフスタイルマガジン

たい焼きを食べながら我が子の幸せを願う

東京には三大たい焼きなるものがあります。四ツ谷「わかば」、人形町「柳屋」、麻布十番「浪花家総本店」。浪花家総本店は「およげ!たいやきくん」の舞台になった店でもあります。しかし、私の思い入れがあるのは東京三大たい焼きではなく、浅草橋にある鳴門鯛焼本舗なのです。

日本には、3月3日に「雛祭り」という女の子の健やかなる成長を祈る年中行事があります。雛人形を飾り、菱餅・白酒・桃の花を供え、桃の節句とも呼ばれます。こどもが生まれて初めて迎える節句は初節句といい、雛人形をその子に贈ります。ちなみに男の子は、5月5日「こどもの日」(別名:端午の節句)に鎧や兜といった五月人形と鯉のぼりを飾ってお祝いします。

浅草橋は、オタクの街 秋葉原と国技館のある両国にはさまれ、浅草の南にある人形問屋街です。息子の五月人形選びから数年後、娘が生まれて再び浅草橋を訪れました。どの店で雛人形を購入するかはすぐ決めたものの、優柔不断の私はどの雛人形にするか決められず、お目当ての店を出たり入ったりしていました。

店の外で母親と相談していると、同じように悩んでいる家族がたい焼きを食べながら休憩していました。いつも行列ができている鳴門鯛焼本舗の鯛焼きです。「あそこのたい焼きおいしいよね」と私の頭をよぎります。

頭を冷やし、店に戻って雛人形を購入すると、ホッとするとともにどっと疲れが出てきました。一日中歩き回って辺りはすっかり暗くなっていました。

「あー!たい焼き食べたい!!」

迷わず鳴門鯛焼本舗に直行し、天然たいやき 十勝産あずきをいただきました。薄皮の、しっとりではなく珍しくカリっとしたたい焼きです。甘くてほかほかあんことのマッチングが、雛人形が決まった安堵感と疲労感を表しているようでした。ふと隣を見ると、先ほど同じ店で雛人形の会計をしている家族も幸せそうにたい焼きを頬張っていました。「人形選びに迷った家族が休憩に来ているのかな?それとも人形を選び終わって〆にたい焼きを食べにきているのかな?」と、行列を見る目も変わりました。寒空の下、娘を抱えて母とたい焼きを食べながら帰宅の途に着きました。

両親には、娘に雛人形を買ってくれたこと、そして30年前に私のために雛人形選びをしてくれたこと、感謝でいっぱいです。これから毎年、この雛人形を囲んでお祝いができますように。これから雛祭りの度に、たい焼きを食べるたびに、私はきっとこの日を思い出すのだろうな。

 

鳴門鯛焼本舗 浅草橋店
住所:東京都台東区浅草橋1-9-1
電話:03-3841-2210
URL:http://www.taiyaki.co.jp/
執筆者:Miki

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coco
東京子連れ食べ歩きライター。
甘いもの大好き。以前は専ら洋菓子だったが、授乳トラブル時に助産師さんから和菓子を勧められてそのおいしさを再認識し、和菓子も積極的に食べ歩くように。並んでもで何度もリピートしたい味、手土産で喜ばれる味、子供と行きやすくておいしいお店、東京ならではの情報をお伝えしていきます。
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