コートを羽織って出かける季節になりました。
秋が深まり空気が冷たく感じ始めると、「小腹の足しに」「おみやげに」とたい焼き屋さんに立ち寄る方も増えるかと思います。
かわいらしい形状や、1つから買える・安い・その場で食べられるなどの手軽さが、老若男女に愛されるたい焼きの魅力です。
たい焼きは今川焼(回転焼)から派生したもの。
鯛は「めでたい」と祝い事に使われたり、庶民がなかなか口にできない高級魚だったこともあり、鯛の形が人気を呼んでこれまで100年以上親しまれてきました。
たい焼きといっても、店舗により「顔」も「形」も「皮」も「あん」も「焼き方」も「焼き加減」もそれぞれです。
何軒ものたい焼きを食してきましたが、本当に千差万別。
それでも人気が一店に集中することなく、いずれも人気店として存続しているのは、客の好みもまたそれぞれであるということ。
JR・東京メトロ日比谷線恵比寿駅東口から徒歩約3分の『たいやきひいらぎ』。
こちらのたい焼きは私好みです。
間口が狭いたい焼き屋さんが多い中、ひいらぎは横広のきれいですっきりした外観です。
お店が見えた途端にあんこのいい香りが漂ってきました。
『一匹三十分、時間をかけて焼き上げるこだわりのたい焼きでございます』と書かれた木の立て看板が目にとまります。
ひいらぎのたい焼きは30分かけてじっくり焼き上げるので、皮はパリパリなのにモチモチした食感が特徴です。
訪れた時は立ち寄る人が度々いるものの行列はなく、すぐに熱々を買うことができました。
できたてが一番なので、その場でいただきました。
木製ベンチあり、ウェットティッシュとゴミ箱あり。熱々を提供するたい焼屋さんとして満点のサービスです。
皮が厚めだったり羽根つきだったり色白だったり、外見だけでも各店違いがありますが、ひいらぎのものは彫りが深く小麦色の肌でパリパリの薄い皮。
あんは、北海道産小豆を使用した自家製粒あん一種類のみ。
粒が大きく、硬すぎず軟らかすぎずのベストなトロトロ加減。
尻尾の先までぎっしり詰まっていて、割ると湯気を上げて溢れ出てきます。
その場で食べる時は要注意。たい焼きが入った紙袋でしっかり受け止めましょう。
塩味がやや強く感じますが、そのためかたっぷりのあんこもしつこくない気がします。
30分焼き続けても皮が焦げず、中のあんこがパサパサにならないのは、気温や湿度により焼き方や小豆の炊き方を変えているからだそうです。
こうした職人さんの追究があって、いつも変わらぬ食感でいただけるのですね。
たい焼きは、いつからか一部で天然物と養殖物と分けて呼ばれるようになりました。
名付け親は、全国の天然たい焼きの魚拓を取るカメラマン:宮嶋康彦氏。(先日TBS系【マツコの知らない世界】に出演されていました。)
天然物とは、魚型の鋳物で1つずつ焼き上げる製法で作られたたい焼き
養殖物とは、大きな焼き型で一度に複数焼き上げる製法で作られたたい焼き
を指します。
これに基づくと、ひいらぎのたい焼きは養殖物。
老舗では鋳物が多く、ガチャガチャとひっくり返す音にも風情があります。
鋳物は熱伝導がよくきれいに焼き上がり、「養殖より天然が旨い」と言われますが、今はたい焼きの世界も「養殖も天然と変わらず旨い」と私は思います。
各店舗独自の味に自信と誇りがあり、それを求める人がいる限り、老舗新店も天然養殖も関係ないのです。
手軽に買えるたい焼きも奥が深いです。
【たいやきひいらぎ 恵比寿】
住 所:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-4-1 恵比寿アーバンハウス1F
電話番号:03-3473-7050
※当日・翌日に限り予約可 詳しくはお問い合わせください
U R L:http://www.taiyakihiiragi.com/
執 筆 者:加藤三和子