小さい頃、親戚やお客様がいらっしゃるのが好きでした。
箱に入った、日ごろめったに口にできない上等な和菓子をいただけたからです。
なので、とにかく上等な和菓子は、お客様からいただくものであって、自分で買うものではないという思い込みが、大きくなってもありました。
一方、季節ごとにかわる、柏餅や桜餅、鶯餅、六法焼きなど、毎日のちょっとした時に食べる和菓子は、近所の饅頭(まんじゅう)屋さんと呼んでいた和菓子屋さんで買っていました。
お客様にありがとうをして、仏壇にそなえて、それから恭(うやうや)しく食べる和菓子。
お茶席でかしこまっていただく和菓子。
家族団らんで食べる和菓子。
一言で、和菓子屋さんとお呼びしているなかにも、買いたい菓子や、持ってゆく場所によって、和菓子屋さんをわたしたちは無意識のうちに使い分けています。
和菓子にもいろいろ種類があるように、和菓子店にも種類があるのだろうか、そう思って菓子職人さんにお聞きしてみました。
お話をお聞きしたのは、神奈川県藤沢市にある 御菓子処 丸寿 のご主人様 岡崎秀一様です。
和菓子屋さんの種類分けには2つの軸があります。
1つ目の軸は、 店舗の形から分ける。
2つ目の軸は、 店舗が位置する街の人口の多さで分ける。
一つ目の軸、店舗の形から分ける方法
一つ目の軸は、接客の違いが生んだ、店舗構えのちがいです。
顧客の需要のちがいから接客方法の違いからが生れ、店舗形態が決まり、ゆえに、主力で取り扱う和菓子の種類もちがってきます。
カジュアル需要をとりこむ 対面型店舗
顧客は道路の脇から店の中に入ることなく、ショーケースの中のものをカウンターの向こう側にいる店員さんにとってもらって、そのまま買うことができる販売形態のお店があります。
この店構えのお店は、カジュアル需要に応える和菓子が中心です。
自分用に1つ買うもよし、家族分まとめて買うもよし、ちょっとそこまで手土産にするもよし。
主に団子や大福、どら焼きなど、作ったその日が1番おいしい菓子が主力商品として売られています。
またこの対面型店舗の和菓子店の特徴として、巻物寿司やいなり寿司なども合わせて販売されていることも多いです。
店の由来によっては、餅屋、団子屋、饅頭屋と近所で呼ばれていることがあります。
昔、団子屋さんだったお店が和菓子屋になったのかもしれませんね。
もしくは、買いに来るお客様が、そこの団子が大好きなのかもしれません。
お客様のなかで占める和菓子が何かによって、それぞれの店を「餅屋」「団子屋」「饅頭屋」と呼んでいるようです。
和菓子屋の分類では、駄餅屋さんとも、呼ばれます。
わたしが小さなころ実家の近所にあった和菓子屋さんは、饅頭屋さんと呼ばれていました。
ギフト需要をとりこむ 引き込み型店舗
顧客がドアを開けて店内に入り、ショーケースごしに店員と相談しながら和菓子を選ぶスペースのある店構えです。
この店構えの店は、ギフト需要や茶席での和菓子需要を取り込む和菓子が中心に取り扱われています。
いつ必要なのか、熨斗はどうするのか、どんなカスタマイズが必要なのかといった細かな注文を聞いてくれます。
和菓子業界で、上生屋さんとも呼ばれる店舗はこの型です。
2つ目の軸 店舗が位置する街の人口の多さ
和菓子屋さんが位置する街の人口や来訪人口の多さによって、扱う和菓子の種類が違うという見方があります。
専門店
人口が多ければ、それにつられて和菓子の需要も多く、和菓子店も専門分化して生き残りをかけます。
例えば、大都市東京には、どら焼き専門店「うさぎや」さん、もなか専門店「空也」さん、かのこ専門「銀後かのこ」さんといったように、看板商品がほぼ専門店化している和菓子店がたくさんあります。
土産物店
お寺の門前町や温泉街などの観光地に、ひとつの菓子に特化して売る和菓子店があります。
例えば、温泉街の温泉饅頭のお店もそうです。
また、伊勢神宮では赤福餅、北野天満宮では梅が枝餅があるようにです。
これも、食べるひとが沢山来てくださる市場があるため成りたつ、専門店の1種ともいえます。
総合店
中心街から少し郊外の街に移ると、幅広い種類の和菓子を総合的に扱う和菓子店が主流となります。
例えば、団子や、大福、どら焼きも買うことができれば、お茶席用の上生菓子の相談や注文もすることができ、そのうえ、ギフト用の箱詰めの相談や、オリジナルの慶弔用菓子の相談をすることもできます。
どら焼きだけでは成り立たないけれど、上生菓子だけつくっていても、和菓子店として成り立たないという経済事情が働くからです。
お話を伺っている御菓子所丸寿さんも神奈川県藤沢市という街の特性から、総合的な菓子店となられています。
和洋融合店
人口が少ない街になると和菓子屋と洋菓子屋の境が曖昧になり、和菓子屋が洋菓子屋を併設していたり、同じ店舗内で和菓子も洋菓子も扱う店が主流となります。
これは和菓子そのものがカステラや金平糖などで和菓子と洋菓子のは境目が曖昧であると言うこともありますが、そもそも菓子そのものを食べる総人口が少ないため、経営をなりたたせてゆくのに和洋融合店舗が増えてきました
あなたの好きな和菓子屋さんはどんな形ですか?
あなたの好きな和菓子屋さんはどんな形ですか?
どら焼きが好きなかた、そのお店は、都会に位置する専門店さんですね。
そして、もしかすると、対面型店舗で売られてますか?
あなたの街の和菓子さんは、街でなんと呼ばれてますか?
餅屋さん? 饅頭屋さん?
え? あなたの街には、餅屋と上生屋さんの両方がある?
きっと、和菓子を召し上がる人口が多い街ですね。
そして、そんな文化に人がたくさんあつまってこられてるのですね。
もしかすると、ケーキも、大福も、贈答用の羊羹も売っている和洋融合店が、一番近くの和菓子屋さんという街にお住まいですか?
これからあなたが行く街は、どんな街でしょうか。
どんな和菓子屋さんがあるか、出会いが楽しみですね。
行く先の土地の名菓を、せひその街にお住まいの方に聞いてみてください。
執筆 和田美香
情報提供 御菓子処 丸寿 岡崎秀一様
御菓子処 丸寿
(運営 有限会社丸寿菓子店)
神奈川県藤沢市羽鳥3-20-9
tel.0466-36-7938
http://www.shonan-sh.jp/shop/marusu