井村屋さんと聞けば、小豆やあんこが好きな方は何を思い浮かべますか?
あずきバーでしょうか。
それとも、ゆであずき?
井村屋さんは2017年に、創業120年、会社設立70周年を迎えられました。
新商品を続々と販売されるなか、とても気になった商品が2つありました。
1つは、煮小豆シリーズと、もう一つはスポーツようかんです。
今回、この煮小豆シリーズと、スポーツようかんについて井村屋さんにお聞きしてきました。
お話しをしてくださったのは、豆谷(まめたに)さんと、荻原(おぎはら)さんです。
小豆を好きになってくれる人の輪をもっとひろげる挑戦を、熱く語っていただきました。
最初、煮小豆のことをお話しくださったのは、主に豆谷さんです。
Q 日本人には、小豆といえば甘いものというイメージがあります。そんななか、どうして甘くない小豆の商品を作ろうと思われたのですか?
小豆の歴史は古く、もともと中国では、小豆の煮汁が解毒剤として使われていたそうです。
そんな、食べ物でも薬でもあった小豆を、甘いものとしてだけでなく、体によい食材としてお客様にお召しあがりいただきたいと思ったのがきっかけです。
その思いのもと、小豆そのものが持つ栄養を、普段の食事に毎日無理なく取り込んでいただける商品として、粒状の煮小豆を作りました。粒状の煮小豆は、このままつまんでおやつとして、もしくはお酒のつまみとして、もしくはサラダなどにぱらぱらっと入れて食べることができます。
もっと手軽に小豆そのものの栄養を普段の食事に取り込んでいただきたいと考えて作りました。
Q 甘くない小豆を食べたことがある人は、あまりいないなか、そこをあえて、甘くない製品を企画された時、社内から反対はありませんでしたか?
反対はありませんでした。むしろ、健康志向の高まりの中、煮小豆を通じてお客様の健康に寄与する商品を作ろうと一丸となりました。
小豆を甘いものとしてでなく、大豆と同じように普段の食事として食べていただきたいという思いで煮小豆を作りました。
Q 井村屋さんでは、今までも、甘くない茹でた小豆を販売されてましたよね?
はい、お赤飯を作る材料につかっていただける「お赤飯の素」を販売しています。
今回の煮小豆は、通常の小豆の水煮に栄養を付与した商品になっています。
この煮小豆は、小豆を炊いたときに出る煮汁を捨てず、そのまま煮汁ごと炊きあげて小豆そのものの栄養を余さず豆の中にぎゅっと閉じ込めた商品となっています。
栄養のある小豆として、お客様の健康に、一層お役にたてればと考えています。
Q 確かに、茹で小豆を作るとき、渋切りといって、茹で汁をザルで切って、煮汁をいったんゆでこぼしますね。
はい。
ですがこの煮汁の中に、カリウムやポリフェノールといった、小豆が持つ健康にいい成分も含まれているのです。
ポリフェノールやカリウムも、食品素材そのものから、食事で取り入れてもらうことができたら嬉しいなと思って開発しました。
Q では、煮小豆と、茹で小豆は違うのですね?
煮小豆は煮汁を捨てないので、小豆の栄養素が溶け込んだ煮汁も小豆の中にぎゅっと詰まっています。
小豆が本来もつ栄養が、一粒一粒のなかに詰まっている点が、煮小豆と茹で小豆の大きな違いです。
Q 日本では茹で小豆をそのまま食べる習慣や、甘くない豆を料理の中で食べる習慣があまりないので、煮小豆を商品として世に出し、毎日の食事のなかで小豆を摂ってねという提案は、いままでいてくださる小豆を好きな方以外にも裾野をひろげようという提案ですね。
甘くない小豆を食べる文化がない日本のなかで、煮小豆を広げるための工夫は、どうされてるのですか?
そこが課題ですね。
弊社では、煮小豆のメニュー提案活動を積極的にしています。煮小豆をサラダやヨーグルト、カレーなどいろいろなものに加えることで、いつもの食事+小豆の栄養がとれることを提案しています。また、ほかに、煮小豆を作るための製法(煮あずき製法=小豆を炊いたときに出る煮汁を捨てず、そのまま煮汁ごと炊きあげて小豆そのものの栄養を余さず小豆の中にぎゅっと閉じ込めた製法)を使って、水ようかんやようかん、どら焼きも展開しています。
Q それが、この煮小豆水ようかんや煮小豆ようかんになるんですね。
はい、そうです。
今まで小豆を使った菓子は、粒あんか、こし餡か、その2つのいずれかから、つくられていました。でも、わたしたちの煮小豆シリーズの中の煮小豆水ようかんは、その粒あんでも、こし餡でもない、こし餡でありながら粒あんの要素も取り入れた第3の餡へと煮小豆を進化させています。
Q 第3の餡ですか?
はい。
こし餡とは、小豆の皮を取り除いた餡です。
炊いた際にでる栄養成分も一緒に洗い流してしまいます。でも、わたしたちの提案する第3の餡は、煮あずき製法(小豆を炊いたときに出る煮汁を捨てず、そのまま煮汁ごと炊きあげて小豆そのものの栄養を余さず小豆の中にぎゅっと閉じ込めた製法)で作った餡を、皮を取り除かず、こし餡のように滑らかな食感にした餡です。
私たちは、この第3の餡のことを、煮小豆こし餡と名前をつけました。
Q こし餡は皮を捨てているので、舌ざわりがよくあっさりしている分、ポリフェノールだけでなく、食物繊維も捨ててしまっているともいえるのですね。
はい、皮にも栄養素がたくさんつまっているので、小豆の栄養をまるごと摂っていただけます。小豆の皮も含めて、滑らかな食感にするのは、これもまた技術開発から必要でした。
第3の餡は、食べていただくと違いがわかるとおもいます。
煮小豆こし餡をつかったこの水ようかんは、少し味の濃いものに仕上がっていますよ。
Q 煮小豆ようかんも味が濃いのですか?
煮小豆ようかんは、煮小豆餡をつかい健康を追求したことに加え、ようかんの食べやすさも追求しました。
ご覧いただけますか。
通常、私たちの製品で、コンビニに売っているミニようかんは、こちらの58グラムの形状のものです。
Q よく見かけますね。小腹が減った時よくお世話になります。
ちょっと甘いものが欲しい時に、糖質補給として喜ばれています。
ですが、今、餡菓子を支持してくださるシニアの世代の中でも、甘いものが欲しいけれど、もう少し小さいものもあったらいいなといったご意見も頂きます。そんなニーズに応えて、わたしたちはこの煮小豆ようかんを15グラムにしました。
また、包装も変えました。
商品の中央部を押し出すだけで食べられるバッケージに変え、しかも一口で食べきれる量にしました。
「煮小豆」だけでなく、煮小豆シリーズ全体が、「健康により寄り添う」理念を、材料や製法だけでなく、パッケージや、形状にも配慮され実現されていることを教えていただきました。いままで小豆を食べなかったひとにも、どんどん広がってほしいですね。
ようかんつながりで、次に、スポーツようかんの新しいチャレンジのお話しも教えてください。
お話ししてくださったのは
井村屋株式会社
開発部 菓子・食品・DCチーム 課長 豆谷 希さん
開発部 菓子・食品・DCチーム 課長 荻原 佳典さん (2018年5月取材時点)
井村屋株式会社
2010年設立※。ようかんづくりから出発した想いや技術をもとに、あずきバー、お赤飯の素、ぜんざいなど、日本の心をテーマにした製品を開発・販売するほか、肉まんなどのヒット商品も持つ。
本社 三重県津市高茶屋7丁目1番1号
http://www.imuraya.co.jp
※井村屋グループとしての創業は1896年(明治29年)・会社設立は1947年(昭和22年)になりますが、2010年に持株会社制に移行したため、井村屋株式会社としての設立は2010年となります。
取材 和田美香 2018年5月17日