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「和やかになれる菓子だから、書いて字のとおり和菓子なんだよ」と語る和菓子職人岩崎さん | Azuki - Red beans webmagazine

小豆と和菓子が主役のライフスタイルマガジン

「和やかになれる菓子だから、書いて字のとおり和菓子なんだよ」と語る和菓子職人岩崎さん

「和やかになれる菓子だから、書いて字のとおり和菓子なんだよ」と語る和菓子職人岩崎さん

小豆を世界にプロジェクト、azuki編集部の和田美香です。

東急多摩川線、矢口渡駅は、蒲田駅から一駅です。

小豆と、小豆を使った江戸のもち菓子を特に可愛がって作っておられる、和菓子職人の岩崎さんに、お話しをうかがってきました。
InstagramやFacebookなどSNSの写真から、ほんとに小豆を煮るのが楽しい、大福がかわいいとおもって作っておられる様子が伝わってくるのが、気になっていました。

というのも、いろんな和菓子がある中で、特に小豆が好きなのがつたわってくるのは、なんでかなあとおもったからです。

 

 

ほんとに駅の改札をでて30秒で着きます。改札を背にして右手です。季節の和菓子の文字が躍ってます。

岩崎さんがいるお店は、東急多摩川線 矢口渡駅から徒歩30秒のところにある、和菓子処みなもとさんです。

駅前商店街の中の、庶民の季節の味を大切にするの和菓子屋さんです。

岩崎健一さんは2代目。
こ当主として、35年以上、毎日、小豆と向き合ってこられてます。
うかがったときもちょうど、桜餅の皮を焼いて、桜餅をしあげておられるところでした。

岩崎さんのお写真から、ほんとに小豆が好きなんだなあとうことがつたわってきます。
お店でも、今日は、大福、いちご大福、桜餅、草餅、みたらし団子、もなか、と、あんこをつかったお菓子が多いですね。
いろんな和菓子があるなかで、どうして小豆を使った菓子を主に扱っておられるのですか?
桜餅のなかにはいるこしあん

 

そうですね。
それは、僕が好きだからです。
和菓子にいろんな餡があるなかで、小豆餡の魅力に取り憑かれたからです。
小豆は、煮る時も、そして味も、奥が深く、終わりがありません。
小豆に取り組んでいると、毎日毎日マイナーチェンジなんてす。

それがすごく楽しい。

すごく楽しんで作っておられる様子が、ほんとにいつもFacebookの写真から伝わってきます。
桜餅をつくる岩崎さん

 

自分がおいしいと思うものを売りたいと思ってます。
そして、それをお客様に食べていただいて、笑顔になっていただきたい。
おいしいもの食べて幸せな気持ちになって、そしてホワット和んだ気持ちになっていただきたい。
それは、僕が、小豆を煮たり、菓子づくりがほんとに楽しいとおもっていることが、つたわっているからだとおもってつくっています。

こうしたら、もっと美味しくなるってことをくりかえしている、だから、いつもがもっともっと楽しくなる。
これをずっと追求しているとほんとに終わりがありません。

 

2代目であられるのですよね。小さい時からずっと小豆が好きだったんですか。
桜餅のこしあんを、皮で巻いてゆきます。

 

逆なんです。
和菓子屋ですから、小さい頃から、周りに和菓子がたくさんありました。
でも、全然見向きもしなかったんです。
記憶にあるのはみたらし団子を、しぶしぶ食べていたことぐらいでしょうか。

 

それが、いまは小豆好きになられている。途中で何があったんですか。
桜の皮で巻きあがった桜餅。こちらの桜の葉も、静岡の特定の地域のものを利用されているそうです。

 

父の遺言です。

父は、私が中学1年の時に亡くなりました。

健一、よろしく頼むよ、という言葉が遺されました。

そうしなければならないと、大学を出てすぐ、家業を継ぎました。

父の跡をまもってくださっていた職人さんがいなくなり、そんななか、菓子店もつづけてゆかなければならなかったので、他所のお菓子屋さんに修行に行く時間がありませんでした。
お店をやりながら毎日が修行でした。
自分の舌で評価して、改良する。毎日毎日それを繰り返していました。
最初の頃は本当に小豆を煮るのが精一杯で、実は、こしあんは、製餡業者から買っていた位なんですよ。

店頭にならんだ桜餅。無添加なためすぐ固くなるので、ビニールにひとつひとつ丁寧にくるまれています。
それが、毎日のマイナーチェンジとおっしゃることとつながるのですね。
一生懸命に取り組んでいるのが、楽しいと言う風な気持ちに変わった時に何があったんですか。

 

とにかく、ずっと、レシピに忠実にやるというやりかたで、最初はやっていました。

美味しさの追及は、日々少しづつかわる、ということを知ったのは、ほんの偶然のことからです。

本当なら、小豆を餡に仕上げるまでに、何度かに分けて砂糖をいれます。
その砂糖を、小分けの皿にとりおいて、ひとつひとつ入れるのですが、ある時、 1皿、入れ忘れた時がありました。
あんこに煮上がった後に、一皿砂糖が残されていることに気づいたので、失敗したと思いました。
仕上がった餡を、どうすることもできませんでした。

残念な気持ちで、なにげなくあんこを1口舐めてみたら、なんと、失敗に感じません。
それがすごく小豆の味を引き立てていたように感じたのです。

残された砂糖の量から、実際につかった砂糖の量を計り直し、再現することができました。
砂糖の量は、それまでより、ぐんと少ないのに、かえってそのことによって、穀物としての小豆の甘みがひきたっているのを、知ったのでした。
それ以来、自分の中で、こんなおいしさをつくりたい思う砂糖の基準が、ぐっと下がり、あんづくりのときの砂糖の量が減りました。

こしあんと、粒あんを、食べ比べさせていただきました。こし餡は、粒あんより、つくるのが3時間余計にかかるのだそうです。どちらが好きという論争がありますが、これは別物なんですね。
毎日がマイナーチェンジとおっしゃっている様子は、まるでノーベル賞受賞の化学実験での発見をお聞きしているみたいです。

 

砂糖の量を減らすというのは、すごく大きな、偶然のエピソードを話しました。
でも日々行っているのは、1つ条件を変えるだけ、という小さなことを行っています。
そうしないと味の比較ができないからです。
これを36年やってきています。

 

 

岩崎さんの写真で、煮ている小豆の様子が、まるでジャズに乗ってビチビチ飛び跳ねているように見える時がありました。
出来上がった和菓子だけでなく、材料選びから、気を配って、愛しておられるから、小豆も嬉しそうに見えるのでしょうか。
岩崎さんが、一番かわいがっておられる小豆の和菓子は、きっとコレ!と和田は感じました。

和菓子は、余計なパーツがありません。
それぞれの材料がちゃんとした仕事をして、形を作っています。
例えば、豆大福は、餅米と、小豆、砂糖、塩、赤えん豆。この5つしか入っていません。
だから、それぞれの材料も、いい仕事をしてくれるものを選んでいます。
その中で特に、小豆は、味の決め手の中心なんです。
あんこの味が決まっていたら、菓子の味か決まったようなものです。

たとえて言えば、モノクロのフィルム写真で、適正露出のネガが現像できたら、プリント作業楽にできてしまうのと似ています。

 

いま最高と思える材料を吟味し、その上で、最高のものに仕上げておられると言う事なんですね。
どんな基準がおめがねにかなって、いまの小豆をつかっておられるのですか?
和菓子は、和やかな気持になる菓子なんだよ、とはなしてくださる岩崎健一さん
和菓子は、和やかな気持になる菓子なんだよ、とはなしてくださる岩崎健一さん

 

はい、いまの小豆とは6年程まえに出会いました。

それまでも、そのとき最高と思える小豆をつかっていました。
ですが、偶然、いまつかっている森田農場さんの小豆に出会えたんです。このことに、とってもわたしは私は感謝しています。
ずっと最高のものをさがしてきていたなか、小豆から飛び込んできてくれたような出会いでした。
わたしは、小豆を愛し育ててておられる、森田さんの小豆に出会えて、ラッキーです。

 

それまでの小豆もおいしいのですが、森田さんのところの小豆は、コクがあるのにしつこくない、そして、すっきりしているのにコクがある。
その両方の味が満たされるのです。
ふつうなら、コクがあるということは、しつこさにつながり、すっきりしているということは、味がそっけない、につながりますので、これってすごいことなんですよ。

そして、味だけでなく、煮ているときに漂う豆の香りが違います。
また、煮ているときの、豆の元気さが違います。
飛び跳ねて生き生きしています。
そんな活き活きした様子や香りが、わたしを楽しい気持ちにもさせてくれます。

良い材料を使うと、作業時間が短縮できるという利点があります。

でも、それ以上に、良いものができると、作り手のわたしの気持ちも違って、高まってきます。
楽しい気持ちでつくり、出来上がった和菓子は、自分でいうのもへんですが、手触りも違います。
私が楽しい、おいしい、嬉しい、という気持ちをずっと込めて作ることができる材料たちなんです。

材料との出会いに感謝し、ワクワクした気持ちで作っていれば、良いものができるに決まっていると信じています。
毎日楽しく作れば、食べ手のお客様も、楽しい気持ちになっていただける。
おいしい食べ物で、気持ち豊かになっていただける。
わたしが、材料たちの命を菓子にしてつなげることで、材料たちの栄養の力で、食べる方も元気で健康できれいにもなっていただける。
食べることをとおして、自分を大事にしていただくことにつながっていただける。
そんなつなぎ手になっている仕事が、楽しいです。

いちご大福は、健康にもよい和菓子という見方もおしえていただきました。ビタミンB、ビタミンC、ポリフェノール、サポニン、アミノ酸、葉酸、食物繊維、カルシウム、マグネシウム。そのうえ、みなもとさんのいちご大福は、無添加。
いちごがおいしい時期は、店頭にならぶそうです。
岩崎さんのお菓子は、日持ちはするのですか?

 

自分が毎日食べたい、食べて楽しいと思う材料しかつかっていません。
なので、大福など、今日中に召し上がってくださいと、お客様にはご案内しています。
固くならない材料は、いれたくないんです。
だって、毎日たべていただきたいのですから。
だから無添加です。

 

和菓子は、生鮮食品なんですね。

 

そうなんですよ。

迷ったら、楽しいほうを選ぶ。そして自分軸を大切にする。このことを、和菓子のお話しをとおして、おしえていただきました。

食べたいと思う時に、ふらりと買いに来て下さるといいなとおもっています。
「和菓子」というと、敷居が高いイメージがある方もおられますが、うちのはデイリーものです。

明日のお昼ご飯を、今日まとめて買う人はいませんよね。
それとおなじように、ああ、食べて元気になりたいなあ、と、おもうときに、買いにきていただく。
そして笑顔になっていただきたい。

うちのは、日持ちがしないので、ここへ食べに来ていただきたいとおもっています。

たまに、ターミナル駅にブランチを出してほしいと言う方が、こられることがあります。
先日は、ニューヨークにも店をだしてほしいとおっしゃる外国人のお客様もおられました。
でも私は1人なので、ここから、どこかへ行くことができません。
なので、矢口渡にいていただければ、おいしいものが食べられると知っていただいて、ここにきて食べていただき、ゆっくりしていっていただきたいと思っています。
ここでしか食べられない味を大切にし、お届けしたいと思っています。

 

岩崎さんの話からは、「楽しい」と「感謝」がキーワードなのがつたわってきます。
つくって楽しいから、食べて楽しい。
食べておいしいから、笑顔になれる。
食べておいしいものを食べることで、より楽しい人生を送っていただきたい。
そして、つくって楽しい材料をつくってくださった方への感謝、出会いへの感謝。
そんな感謝をつなぎたいという想い。
そんなメッセージがつたわってきます。
和菓子は、和やかな気持になる菓子なんだよ、とはなしてくださる岩崎健一さん
和菓子は、和やかな気持になる菓子なんだよ、とはなしてくださる岩崎健一さん

口から入るもので、健康だけでなく、考えることも全てが支配されると思っています。
食べ物で考え方も変わります。
デイリーにたべていただく和菓子こそ、気持ち豊かになれる、たべて身体もキレイに健康になれることが大切とおもっています。
食べて、ほわっと幸せな気持ちになれる、まわりにも感謝できる、そのために自分を大事にすることにつながる味と信じてます。

楽しく和菓子をつくりつづけ、 森田さんの小豆も含めて、材料や菓子道具など完成する人たちに感謝して、自分の出来る製造技術をだしきってゆくことを目指しています。
人が、気持ちをこめてつくっているものです。
食べたひとが、和やかになるから、これ、和菓子なんですよ。
漢字のとおりなんですよ。

感謝と、楽しさで、和やかさを世界にひろげる、これが目指す世界です。

小豆や和菓子をとおして、楽しい、ワクワクの気持ちをつたえ、自分を大事にする人の輪をひろげるとこまで、岩崎さんの和菓子の理想はひろがるのですね。

手土産に大福を買う。もし食べきれなくて、翌日まで残ったら、オーブントースターかフライパンで、軽く焼き目をつけるぐらいまで温めると、固くなった皮もやわらかくなるのだそうです。添加物がはいっていないからこその、食べ方の広がりですね。

そして「特に、小豆に世界一の愛を注いで育てておられる、森田農場さんご夫婦とは、小豆の愛のリレーつないでいきたいですね。」とも最後に教えていただきました。

愛のリレーのお話し、食べ手も、体を、自分を大事にすることで、リレーをひきつぎたいと心から感じました。

作り手の想いをおききすると、みなもとさんの大福を毎日食べたくなり、お土産に豆大福をたくさんいただいて帰りました。

和田美香

取材日 2017/3/22

 

 

和菓子処みなもと

季節の和菓子の文字が店頭にはためいています。

〒146-0095 東京都大田区多摩川1-21-10
電話 03-3759-8172
最寄り駅 東急多摩川線 矢口渡駅
英語お話しいただけます。
お買い求めいただいた甘味をその場で召し上がっていただける喫茶コーナーあります。

みなもとさんの facebook URL
https://www.facebook.com/%E5%92%8C%E8%8F%93%E5%AD%90%E5%87%A6%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%82%82%E3%81%A8-572480986129489/?pnref=story
岩崎健一さんの facebookURL
https://www.facebook.com/kenichi.iwasaki.144

ABOUT THE AUTHOR

Azuki編集部編集長和田 美香
むくみやだるさで仕事も子育ても苦しかったとき、小豆玄米ごはんや、オリジナルの小豆シリアルを毎日食べることで、調子をとりもどす経験をする。もともと美容業界で働いていており、内面から輝く美容には、毎日の食も大切と実感していたことから、小豆のよさを世界の女性に伝える大使としてAzuki.tokyoの活動を始める。
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